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2015年11月24日

デング熱の適切な治療を受けるためのヒント。マレーシアのデング熱は昨年の+18%で増加中 今年の発症者数は10万人超!もはや他人ごとではない

日本でも国内での感染例が発生し、記憶に新しいデング熱ですが、マレーシアをはじめとする東南アジア諸国では非常に発生件数の多い感染症です。

11月初めの発表によると、マレーシアでも2015年の発症件数が102801例、うち死亡者数が283例(死亡率0.28%)と報告されています。
近隣のタイでは同時期、発症111825(うち死者108)、フィリピンでは先月までの統計で発症124728(うち死者374)と報告されています。

7月の政府発表のデータによると、マレーシア国内では患者の報告数が最も多いのがセランゴール州で、その割合は国内総数の50%を超えています。2位のペラ州(10%)、3位のジョホール州(8%)、4位のKL/プトラジャヤ(7%)と比べてその多さが群を抜いていることがわかります。
他の国のデータですが、雨期の後半にデング熱が流行りやすいようなので、現在報告数が少ない地域でも雨が多くなってくるとともに流行する可能性もありますので、油断大敵です。

デング熱はネッタイシマカを中心とした主に昼間に活動する蚊がデングウィルスを持っている人の血を吸い、蚊の体内で唾液中にウィルスが移行したのち(8~12日)、さらに他の人の血を吸うときにウィルスが体内に入ることで伝播していきます(蚊の寿命は約1か月)。

薬やワクチンによる予防はいまだ確立されていないため、各人が蚊に刺されない工夫をする、蚊を増やさないといった方法で防ぐしかありません。

デングウィルスが体内に入っても、多く(80%)は症状の無いまま体内で抗体を形成し、収束してしまいますが、一部において発熱など症状が出現(発症)し、発症者の5%が重篤化すると言われています。

マレーシアの統計データにあてはめてざっくり計算すると
  •  総国民数           3000万人
  •  デングウィルス感染 50万人(総人口の1.7%)
  •  デング熱発症        10万人(感染者の20%)
  •  重篤化                  5千人(発症者の5%)
  •  死亡                     282人(重篤化した患者の5%)   


※統計データを見る際に注意しなければならないのは、本当に患者の実数が増えているのか?ということです。
デング熱の症状や危険性が広く知れ渡れば、それだけ病院を受診する割合も増えるので、数字は増えますし、検査のできる病院が増えたり、病院・クリニックでのデング熱に関する知識や連携が高まれば、それだけで報告数は上がっていきます。つまり、統計データを以前のデータと比較する際はこれらの社会的バイアスも考慮する必要があります。

デング熱の症状や治療法については各専門サイトやウィキペディア等に既にまとめられていますが、これらを統合し、治療を受ける際の注意点などを中心にまとめていきたいと思います。

こんな症状が出たら病院へ

  • 40℃近い発熱
  • 頭痛・目の奥が痛い
  • 筋肉痛・関節痛・骨の痛み
  • 発疹

解熱について

デング熱の解熱鎮痛に対して使用してよいのは唯一アセトアミノフェンパラセタモールと呼ぶ地域もありますが同じものです)です。日本の市販薬ではタイレノール、マレーシアではパナドールと言う製品がメジャーです。
アスピリンやロキソニン、ボルタレンなどの解熱鎮痛剤は出血傾向を助長するため使用してはいけません。
逆に、頭痛や各種痛みに対して鎮痛剤を服用する場合は先に発熱の状態を確認して、高熱が出ているようであれば、デング熱を疑い、アセトアミノフェンを服用する必要があります。
また、デング熱と鑑別が必要なチクングニア熱では出血が起こらないため、どのような解熱鎮痛剤でも使用可能ですが、診断がつくまではアセトアミノフェンを使用すべきです。

病院での診断

  • ウィルスを見つける
     簡易検査キットでデングウィルスの抗原(NS1)、抗体(IgM・IgG)の出現を見る
     PCR(ウィルス自体を検出する高感度な測定)
  • 血液検査
     白血球の減少
     血小板の減少
     ヘマトクリットの上昇
     血漿中タンパクの低下
  • 自覚症状
 これらを総合的に判断し、デング熱かどうか、またその重篤度を判定し、入院が必要か外来通院で対応可能かどうかが決まります。
また、デング熱の重篤化リスク因子となる乳幼児、高齢者、妊婦、糖尿病患者、腎不全患者は入院して経過観察することもあります。

症状がひどくなければ、外来通院のみで対応が可能ですが、以下のような症状が出たら、病状悪化のサインです。すぐに病院を受診します。
また、自宅では発熱や嘔吐による消耗分を補充するため、経口補水液(ORS)をしっかり摂る必要があります。

症状悪化のサイン

  • 高度の腹痛
  • 頻回の嘔吐
  • 四肢の冷感
  • 皮下出血の出現
  • 黒色便やコーヒー色の嘔吐(消化管出血)
  • 無尿
  • 呼吸苦

デング熱の重篤化

デング熱で命の危機に直結するのは末梢血管から血漿成分が漏れ出すこで血圧が低下したり、消化管出血のような大量出血によりショック状態になってしまうことです。
上記の症状悪化のサインはこの重篤化の初期症状であるため、自宅でも熱が下がった後も十分な観察が必要です。

※2回目の感染(別のウィルス型に感染)は症状が重篤化しやすいという説が良く聞かれますが、十分な検証は行われておらず、一概に2回目だから、、とは言えないようです。
 

輸血について

以前は血小板の低下に合わせて血小板輸血が行われてきましたが、現在、WHOは血小板輸血は推奨していません
血小板の減少に伴い、大量の出血が起こっていることが検査や症状よりわかった場合に全血(献血そのもの)を使用します。
つまり、出血していなければ、血小板の低下を是正する必要性は低いという考え方です。
また、ショック状態が発生してしまった場合はその病態によりリンゲル液等の輸液や人工血漿(輸液の一種)を使用します。アルブミン(血液製剤)は人工血漿を優先して使用し、極力使用しないようにします。

国内外問わず、基本的に輸血は可能な限り避けるべきと考えます。
現在は多くの国でHIV・肝炎などの検査を行い、輸血や血液製剤の製造において安全に十分配慮していますが、現在分かっていない未知の病原体が含まれている可能性は否定できず、またごくまれに検査をすりぬけて既知の病原体が含まれてしまうことも実際に発生しています。

※参考:WHOのデング熱治療ガイドライン
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/44188/1/9789241547871_eng.pdf

マレーシアのデング熱流行状態がわかるサイト

iDengue

マレー語のみですが、感染者数の動向や、
ホットスポットがわかる地図ツール
 http://idengue.remotesensing.gov.my/&pageifv2/
など、かなり便利です。

地図ツールの見方はこちらにあります。
http://idengue.remotesensing.gov.my/idengue/page2.php?kandungan=content/s_langkahcegah.html
限局した地域で30日以上継続して患者が発生した場合をホットスポットと呼んでいるようです。
地図上旗が立っているところがホットスポット、赤線で囲まれているのが14日以内にデング熱の報告があったところ。
日本でもそうでしたが、感染場所を特定するのはかなり難しいことだと思うので、この地図ツールの精度は未知数ですが、参考にはできると思います。


予防

 ありきたりですが。。。。。
  • 長袖を着る
  • 虫よけスプレー・液を塗る(こまめに塗りなおす)
  • 家に網戸をつける

予防に勝る治療なし、です。


引き続き、医療情報をアップしていきます。

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